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2024年5月27日、袴田事件再審無罪判決の一刻も早い確定を求めるとともに、 あらためて死刑の廃止と再審法の抜本的改正実現に向けて、全力で取り組む決議

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袴田事件再審無罪判決の一刻も早い確定を求めるとともに、
あらためて死刑の廃止と再審法の抜本的改正実現に向けて、全力で取り組む決議

 

1.戦後5件目の死刑再審無罪事件となる袴田事件の再審公判が、本年5月22日、ついに結審した。判決期日は9月26日と指定告知されている。
 2023年3月の再審開始決定確定以来、弁護団・支援者は、一刻も早い再審公判の開始とともに、再審公判の即時終結と袴田巌さんへの無罪判決を求めてきた。しかるに検察官は、実質的審理はすでに再審開始決定までの手続で尽くされているにも関わらず、同年7月、再審公判において改めて有罪立証を行う方針を示した。そして、再審開始の根拠となった「5点の衣類」の血痕問題について複数の法医学者による鑑定を行い、証拠調べも求めるなど、ほぼ“蒸し返し”といえる議論を繰り返し、袴田巌さんの雪冤を果たすまでの期間はまたもや引き延ばされることになってしまった。
 事件当時(1966年)30歳であった袴田巌さんはすでに88歳となり、拘禁反応の診断により再審公判の法廷に立つことさえできない状態となっている。代わりに出廷した姉の秀子さんもすでに91歳である。さらに、これまで長きにわたって袴田事件弁護団を率いてきた西嶋勝彦団員も、今年1月、念願の袴田さんの雪冤を果たす前に、亡くなられた(享年82歳)。これ以上無意味な時間を費やすことは、人権上はもちろん、人道上の見地からも、到底許されるものではない。静岡地方裁判所が言い渡すであろう無罪判決に対して、検察官は即刻上訴権を放棄し、袴田巌さんの無罪判決を即時確定させなければならない。

2.袴田事件は、あらためて死刑制度廃止と再審制度の抜本的改正の必要性を示すものとなった。無実であるにもかかわらず、いつ執行されるとも知れない死刑に日々苛まれ、精神を病んでしまった袴田巌さんの姿は、死刑という制度そのものの残酷さを世間に知らしめた。そして、誤判による死刑の具体的可能性が、すでに5例目となった現実そのものが、死刑制度の存立に対する大きな批判となってあらわれている。なお、かかる現状にもかかわらず、検察官はこの期に及んで死刑求刑をしており、袴田さんにさらなる残酷な仕打ちを続ける非情さに憤るばかりである。死刑執行は即時に停止し、制度そのものも速やかに廃止されるべきである。
 さらに袴田事件の再審は、再審制度の抜本的改正が必要であることを浮き彫りにしている。再審請求の過程で開示された「5点の衣類」の写真のネガフィルムや取調べ録音などは、捜査機関による証拠ねつ造や自白強要の可能性を強く示唆し、再審開始の重要な証拠となり、再審請求審における証拠開示規定の創設が強く求められる根拠となっている。また、2014年3月の静岡地裁における再審開始決定(村山決定)から昨年3月の再審開始確定までさらに9年もの時間が経過したのは、ひとえに検察官による再審開始決定に対する異議申立てが認められているからであり、このことは、再審開始決定に対する検察官異議申立ての禁止を求める声を裏付けることになっている。袴田事件の再審であらわれたこれら現行再審法の欠陥は、他の誤判再審事件においても共通するものであり、早急かつ抜本的に改正されなければならない。

3.袴田事件の再審が注目を浴びるとともに、再審法改正の運動もかつてなく盛り上がっている。この間、日本弁護士会連合は再審法改正実現本部を立ち上げて、全国キャラバンによる市民集会の開催や、国会議員、地方自治体首長への賛同要請などの運動を実施している。また、日本国民救援会をはじめとする市民団体は、全国の地方自治体の議会を対象に、再審法改正意見書の採択を求める運動を展開し、本年4月末現在、全国で270を超える地方自治体で意見書が採択されるに至っている。このような再審法改正を求める大きな国民世論に後押しされ、今年3月11日には国会内で、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が超党派で立ち上がった。同議連には、自民、公明の与党から、立民、維新、共産、国民、社民、れいわ、無所属の議員を含め、本年5月14日現在、260名を超える国会議員が参加している。
 このように、再審法改正の大きな流れは、すでに押し止めることができないところまで来ているが、今後は法務・検察側の抵抗も当然予想される。現に白鳥・財田川決定後の1980年から90年代にかけて行われた再審法改正運動は、当時の法務・検察の強力な抵抗によって頓挫している。政治的駆け引きによって、再審法改正の趣旨が骨抜きにされる可能性も払拭できない。再審法の改正を真に冤罪被害者の救済に資するものとするためには、引き続き国民的世論を盛り上げてゆくことが必要となっている。

4.自由法曹団は、一刻も早く袴田巌さんの雪冤が果たされることを求め、袴田再審事件の無罪判決に対する検察官上訴を許さず、再審無罪判決の確定を求めるとともに、あらためて誤判による死刑制度の速やかな廃止と、再審法の抜本的改正による冤罪被害者の救済を目指す取り組みに、力を尽くすことをここに決議する。

 

2024年5月27日

自 由 法 曹 団
2024年福島・岳温泉
5月研究討論集会

 


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